実施状況

第1回イノベーション講座 実施結果

1.実施概要

日時等

開催日 令和元年7月29日(月)12:30~16:30
会場 石巻市水産総合振興センター 3階 中会議室
テーマ 『変化の激しい時代を生き抜くためには』

第1部 基調講演

講演者 東北大学地域イノベーション研究センター 特任教授 権 奇哲 氏
テーマ 強い事業モデルの構築に向けて~変化の激しい時代を生き抜くためには!~

第2部 事例発表

ゲストスピーカー ㈱ひろの屋(岩手県洋野町) 代表取締役 下苧坪 之典 氏
㈱津田商店(岩手県釜石市) 常務取締役 小笠原 正勝 氏
㈱斉吉商店(宮城県気仙沼市) 専務取締役 斉藤 和枝 氏

第3部 事例研究

モデレーター 東北大学地域イノベーション研究センター 特任教授 権奇哲 氏
ゲストスピーカー 上記3者

2.参加者数

現地会場 ウェブ配信
水産関係者 支援者 小計 水産関係者 支援者 小計
12人 14人 26人 5人 6人 11人 37人

3.内容

第1部 基調講演

「強い事業モデルの構築に向けて~変化の激しい時代を生き抜くためには!~」と題し、東北大学地域イノベーション研究センター、権教授が基調講演を行いました。ご講演頂きました。

冒頭、三陸地域の水産加工業の目指すべき姿として昨年度提言された“『SANRIKU/三陸』を世界のトップブランドにする”の実現に向けては、地域でイノベーションを起こすための基盤づくりが重要であると指摘し、そのための具体的な取組として、本事業におけるイノベーション講座、テーマ別研究会を通して、それを進めていくという一連の流れについて説明しました。

その後、イノベーションとビジネスモデル、経験デザインと原型思考等のキーワードについて、具体的な事例紹介も行いながら、その考え方やポイント等について説明しました。

イノベーションとは、新しい価値の創造・普及であり、「技術革新ではなく新結合による新しい価値の実現・普及であること」「組織の中で起こる変化ではなく、社会に生じた変化であること」という定義、考え方を説明しました。ビジネスモデルについては、「自社の対象顧客は誰か?(WHO)」「自社が対象顧客に提供する価値は何か?(WHAT)」「価値をどのように提供するか?(HOW)」「なぜ自社が儲かるのか?(WHY)」を考え、ビジネスモデルを定義し続けることの重要性を説明し、その思考のためのビジネスモデル・キャンバスについても紹介しました。

経験デザインと原型思考については、コモディティ化からの脱却が重要課題であり、それを克服するために、自社の事業が大きく飛躍することを考えること、目標にすることが第1ステップであることを説明しました。その上で、飛躍するための考え方として、「顧客のために“顧客の前に立つ”事業の在り方」「デザイン発想のイノベーションへの気づき」があることを説明しました。また、デザインとは、導きの構想であり、「だれをどのような未来へと導きたいのか?」という経験デザインを事業構想の基本とすることの重要性を説明しました。経験デザインによるイノベーション(経験イノベーション)の具体的な事例として、
アフリカでの生活に欠かせない水汲み作業をタイヤ型のタンクを開発することで労力の軽減、作業の効率化を図った事例を紹介、アップル社の元CEO、スティーブ・ジョブスがコンピュータのためのデザインではなく、デザインのためのコンピュータであるという定義づけをし、一連のプロダクトを世に出したこと、人類を新しい生活世界へと導くことにこだわり続けたことを説明しました。つまり、デザインから事業を生み出し、事業を通じてデザインを実現するという考え方の重要性を指摘しました。そのほか、多様な心理を満足させるためのアルテミデ社の照明器具、ウォークマンというプロダクトからi-PodというプロダクトとiTunesというアプリを組み合わせた新しい生活スタイルを提案した事例、正確な時間を刻む腕時計という機能に、ファッション性やアクセサリーとしての価値を付与したこと、現代はiWhatchに代表される情報機器、健康管理機器という新しい経験を提案している事例などの説明をしました。最後に原型思考について、原型図を元に世界初の発想方法を説明し、アフリカ市場向けのエアコン等の事例を紹介し、簡単な演習を行いました。

第二部 事例発表

事例発表として、三陸地域の水産加工業者である株式会社ひろの屋様、株式会社津田商店様、株式会社斉吉商店様の3社から自社の取組について発表して頂きました。 ひろの屋様からは「ローカルからグローカルへ~地域資源を活かした新たな価値の創造と世界への挑戦~」と題し、東日本大震災をきっかけに、世界を見据えた水産ビジネスを実践するため地域商社「北三陸ファクトリー」を設立したこと、洋野うに牧場だけでなく、三陸地域の水産物、農産物、伝統工芸品など、エリアの価値を顕在化、発信していくことで、食への高いこだわりを持つ世界のプレミアム市場に参入する取組についてお話を伺いました。

津田商店様からは「安全、安心の国産商品が全国の学校給食で高評価」と題し、これまでの事業の主軸である学校給食向けの水産冷凍食品の製造、缶詰のOEM製造を行ってきたが、東日本大震災をきっかけに、自社の強みを見直し、全国の学校給食への水産加工食材の供給を強化する戦略を取ったこと、原発事故の風評被害の払拭に向けた対応を進めたこと等についてお話を伺いました。

斉吉商店様からは、東日本大震災以前のBtoBのビジネスモデルにおける苦労、リスクについてご説明があり、東日本大震災をきっかけに、自社の強みを見直し、高いレベルの加工技術を持っていること、家族経営に近い規模の会社であることから、自社ブランドを立ち上げ、BtoCのビジネスモデルに転換したことについてお話を伺いました。自社ブランドの商品開発を進め、県内外の色々な催事に積極的に参加していること、「ばっぱの台所」という生活者を対象とした料理教室の開催、自社ECサイトの立ち上げ、首都圏百貨店に自社直営店の開業、気仙沼に自社の飲食店の開業など、具体的な取組についてお話を伺いました。

第三部 事例研究

事例研究として、権教授がモデレーターとなり、事例発表頂いた各社が現在のビジネスモデルを構築するにあたり、「強さを支える事業経営の根源にある考え方」「新しい事業機会への最初の気づき」「重視する能力、そのための取組」等について意見交換、整理しながら、各社の取組のポイントについて深堀しました。

「強さを支える事業経営の根源にある考え方」について、ひろの屋様からは、過去に参加した「起業家養成講座」の講師との出会いの中で“挑戦する権利”と“失敗する自由”ということを教えられ、ベンチャーマインドを自ら築き上げてきたこと、その意志を持って経営者自身が考え方をぶれないようにしないと従業員や地域がついてこないこと、そのためには自らを磨いていくこと、学んでいくことが大事だという意見がありました。津田商店様からは、会社の経営理念が「誠」であり、とにかく愚直に真面目に仕事をしていくこと、人口減少や輸入品が拡大する中で、自分自身が少しずつでも変わっていくという姿勢を持ち、お客様から認められるということが重要であるという意見がありました。斉吉商店様からは、螺旋階段のように行きつつ戻りつつしながら、自分たちの行きたい方向に進んでいくことをイメージし、社内でも共有していること、従業員が生き生きと働くことが経営者として臨んでいることであるという意見がありました。

「新しい事業機会への最初の気づき」について、ひろの屋様からは、経営者自身が国内外の消費地に赴き、どこにマーケットがあるかを見極めること、例えば、これまで三陸というブランドにぶら下がり、自社商品と他社商品の差別化を図ってこなかったことの弊害に気づいたことを挙げられたほか、そのためにこれまで行ってきた現場の作業を全てやめ、時間をつくり、気づきの機会を設けることという意見がありました。津田商店様からは、高度経済成長期に子どもの数が増加している中、学校給食に着目したこと、各地の栄養教諭と話をしながら、商品改善を長く続けてきた結果、現場から高い評価を得て、全国展開に至ったという意見がありました。斉吉商店様からは、過去にBtoBの事業の中で年間を通して発注量に相当のバラツキがあり、自社として対応が厳しいことを感じていたこと、海外視察の際に、少ロットで高品質な商品で勝負しているファミリービジネスの会社を知ったことが良い機会となったという意見がありました。

「重視する能力、そのための取組」については、ひろの屋様からは、水産加工業界が旧態依然とした状況の中で、水産加工業者同士が連携すること、志を一つにすることで業界が変わっていくと考えているという意見がありました。津田商店様からは、学校給食に関して、現地の駐在員が栄養教諭のところに足繁く通い、現地のニーズを拾い、製造現場にフィードバックしているという意見がありました。斉吉商店様からは、従業員一人ひとりが良くなりたいという意志をもって貰いたいこと、例えば都内百貨店に出店した際に採用した人材は自社商品に魅力や誇りを持っており、仕事を覚えるスピードが非常に早くレベルが高いということを挙げられ、仕事のストレスがある中でより良い仕事をするという意志を持った人材と一緒に仕事をしていきたいという意見がありました。また、参加者からも活発に質問が出され、3名のゲストスピーカーにお答え頂きました。水産加工業にとって良い原料を確保する方法については、ひろの屋様より、三陸地域の付加価値の高い原料を持つ事業者と連携すること、その地域でどの食材を押し出してトップブランドにしていくかという視点が重要であること、斉吉商店様より、原料不足のリスクに対して、地元だけにこだわらず全国から自社の目利きで良い食材を引いてくるという視点を持って対応しているとの回答がありました。また、水産加工業者が連携して取り組むにあたり、どのような企業と連携するべきかとの質問に対しては、ひろの屋様より、お互いの強みを活かした連携の方策や消費者ニーズを他社と共有することでより良い商品開発につながるとの回答がありました。

4.会場の様子